言葉と責任−「存在の彼方へ」を読んでみる4/もぐもぐ
 
たいこと」というものがあると考えられている。人は言いたいことがあるから表現するのだ。それが表現というものについての、最もシンプルな見方だろう。「言いたいことがある」その衝動が、人をして相手に対して口を開かせ、若しくは筆を執って文章に記す、そうした第一の原動力になっている、と想定する。実際そう単純でないこともあろうが、少なくとも、これは一般的な表現観としてはよく見られるものであるし、現実の一側面を言い表したものであることに間違いないのではなかろうか。
そして、言いたいことがあるから「言う」。口にする。発言する。面と向かって伝える。これは単純な一つの行為である。口を開けて、音声を発する。言語を以て表
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