言葉と責任−「存在の彼方へ」を読んでみる4/もぐもぐ
 
い。雨上がりに走る虹から、真昼の海に輝く光の乱反射、暗闇で仄かに灯される蝋燭の炎の妖しさ、そして星々の冷たい針の光り。光はその時その場所で、見るたびに異なり、一度として同じことのない美を、私たちに訴えている。

アドルノは、「哲学」をプリズムに喩えた。だが、もう少しフェアに言うのなら、「言葉」こそがプリズムではないのだろうか。そして例えば、「詩」のようなものが。
「アウシュヴィッツの後に詩を語るのは野蛮である」とアドルノは言った。勿論それは深刻な反省の中から語りだされた言葉ではあるのだが、今一度、踏みとどまって、「言葉」について、注意深く見直してみる道筋もまた、同様に残されているかもしれない
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