言葉と責任−「存在の彼方へ」を読んでみる4/もぐもぐ
 
哲学を、多様な光を乱反射する「プリズム」に例えたのは、ドイツの左翼思想家テオドール・アドルノであった(「否定弁証法」より。木田元他訳、作品社、1996年、74ページ)。プリズム。それは見る角度によって異なった多様な光を反射させる。同じものを見つめながら、誰ひとりとして、二度と、同じ光を受け取るものはいない。

この比喩は、光というものの特性を良く捉えている。一方で、光には、あるかないか、明るいか暗いか、しかない。光は全てに於いて共通のものである。如何なる太陽から発したものであれ、如何なる炎から放射されたものであれ、全ての光は平等に地を照らすだろう。他方で、光の煌めきには、何一つ同じものはない。
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