不安定な安定?ユーリさんの朗読について/渡邉建志
 
「白鳥忍」のsを力強く読んでしまう。これは意図したものではなくて、自然な分、なにかものすごいビートとなってわれわれを襲う。後ろ回し蹴りで倒します、と宣言する白鳥忍を再生するユーリさんはもはや彼女自身が白鳥忍であり彼女自身が後ろ回し蹴りを今にもしそうな表情で読んでいる。非常にまじめな顔で無表情にクールに、ハクチ的なことを言う。変態的なことを言う。そこがすごい。その無表情と苛立ち、と、言っている内容(しかも連呼)のギャップ。そして彼女の自然な発音がそれを助長。彼女はすべてを発音しない。平坦に読むことがない。消音や入音が自然とあり、しぜんなクレッシェンドがどこかに潜んでいる、彼女自身が気づいていないどこ
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