不安定な安定?ユーリさんの朗読について/渡邉建志
どこかにそれがある。それが彼女の武器であるところの偶発性だ。ユーリさんはいつも安定しているがいつも不安定である。不安定さの幅をコントロールできているから安定である。しかし不安定であるからわれわれは興奮する。音楽に合わせてしまう人たちにはこの不安定さがない、どこへいくか分からない怖さなどまったくない、メトロノームの人たちはメトロノームから外れていかない、逸脱の恐ろしさが微塵もない、しかし彼女は次に何を言い出すか分からない。いつどのタイミングでまた白鳥忍の後ろ回し蹴りが炸裂するか分からないのだ、そして彼女がどんなにうれしそうに(いや、無表情なんだが)それを発音するのかをどきどきして待たずには居られないのだ。
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