海釣りの日/三州生桑
、卵黄のやうな体液が海中に漂ふ・・・。私は釣り餌を手に、砂浜に上がる。濡れたジーンズが重い。
私の釣り竿を見知らぬ老人が組み立ててゐた。有り難迷惑だったが、竿を受け取り、礼を言っておく。老人は際限なく喋り始める。私は生返事をする。
見本を見せてやらう、と言って、老人は私の釣り竿を取り上げると、サッとひと振りする・・・。軽い錘しか付けてゐないのに、針は百メートル先まで飛んで行ってしまった。老人は得意さうに笑ひながら去り、私は釣り糸を手繰り寄せる・・・百メートル!
女が微笑みながら歩いて来て、高らかに言った。
「ポンジュース!」
手にオレンジジュースを持ってゐる。どうやら「ボンジュー
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