海釣りの日/三州生桑
 
ュール」と掛けてゐるらしい。つまらない洒落だが、とにかく美人だった。
彼女の話しは面白かった。中国から来た留学生だと言ふ。私に気のある素振りを見せてゐたが、一刻も早く釣りがしたかったから、誘ひには乗らなかった。釣り糸の束を手に、私は彼女に別れを告げて立ち去る。

海岸に出る扉を開けると、男が一人立ちふさがってゐた。この世で最も忌み嫌ってゐる男だった。その醜い男の傍らには、さきほどの美人が立ってゐた。男は誇らしげに笑ふと彼女を抱き寄せ、これ見よがしにキスしようとする。彼女は顔をそむける。
女は金で買はれたのだらう。私は海岸へと走り出す。釣り竿と蟹を持って。






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