「 空白、の。 」/PULL.
うやく自分が泣いていたことに気が付いた、気が付くとそれは実感になり、実感になるとそれはとめどなく、止まらなくなった、泣き出したわたしの肩を遠慮がちに少年の腕が包む、少年の音が聞こえる、とくんとくんと、少年は鳴っていた、バスはなおも傾き、わたしのからだは少年に押し付けられる、坂の上に着くまでにはまだもう少し、時間が掛かりそうだった。
四。
彼を読む。わたしの指は揺れている、筆先が白い紙に擦れ、はたはたと黒い染みを作る、染みははじめは小さいただの黒点だが、徐々にぼやけ大きくなり、わたしの心を書き出す、だけどわたしの心は彼の読みたいものではなく、だから彼はよりかたく角張った文字で彼を書
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