「 空白、の。 」/PULL.
たしは、何も考えてはいけない気持ちになり、何も考えてはいけないことばかりを考えてしまい、それを、口に出して彼に言いたくなる、だけど彼は白衣のポケットからいつもの紙の束を取り出し、それでわたしに話しかける、彼の文字はかたく角張っていて、わたしの眼は、いつも痛くなる。
三。
ぐうん。不意に強い力で引かれ、振り返ると、少年がいた、少年はまだ男の子といった方がいいぐらいの年にも見えたが、澄んだ夜空を思わせる眼が、もう自分は男の子ではないとわたしに語っていた、少年は、わたしの眼を指さしていた、わたしがその意味を解らずにいると、座席越しにそっと近づき、指で、それを拭ってくれた、わたしはようや
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