不感症女の数時間/詩集ただよう
彼が教えてくれた話では、昔の貴族はルードヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンを禁じていて、なんでか、聞くと、女にしかわからないはずだろうからいつか聴くといいと、言って、同じ月に、横浜みなとみらいホールのチケット、一枚と、独和辞典を、プレゼントしてくれた
特に、最近の私はシラーの詩がとても好きになっていると、言っていた
私は喉が渇いていて、へそのあたりで空腹の音もなっていた
カーテンを取り付けていない、不自然な彼の八階のリビングで、濃くなったソファーの染みを見ていると、自然と腰を揺らして、手をついて、背筋を起たせていた
私は幼いときに無くしてしまった父が好きだった
母よりも愛される
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