The Muddy marines/詩集ただよう
 
長していく身体以外になにもない少年の家出なんてそんなもんだ。母親が嫌味っぽく「だれ?」とドアの向こうで言う。このまま帰るのをやめようかと思った。するとカチャリと鍵が回されて、ドアを開けて、僕は中に入った。
「ごめん、お母さんが言い過ぎた」
涙が無意識にあふれ出た。悪いのは自分だと知っていたから、そんなことを言って欲しくはなかった。

今ならなんであの日、幼稚園に行きたくなくなったのかがわかる気がする。きっと幼稚園にあと何回行くと小学生になり、小学生になるってことは何かに近付いていくことだと、気付いたからだろう。

中学を卒業すると、九年間一緒にいた友達や中学で出来た友達とも別の
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