夜が遠い/飯沼ふるい
 

おんぶをせがむ
それを拒める理由など
あるはずもなく
友達が煙草を吸うのも
たぶん
ため息をごまかしたかったから
彼の瞳が涯なく遠い
 
僕らは最低限の希望の進路さえ忘れたふりをして
大人になっていく自然を拒むために
立ち止まっているのかもしれない
 
 



「少年」という価値観が
歪み始めた夜に突然鳴る
チェーンソーのようなバイクの排気音
 
藍色の冷たい夜を
必死に切り裂いて消えていく
思い出を破壊しつくして消えていく
いつまでも耳の奥に響いている
回想や逃避を惨殺して
僕らの会話を沈黙させる
そこであることに気付いたのだ
それ
[次のページ]
戻る   Point(5)