夜が遠い/飯沼ふるい
 
それは世界に静けさを染み込ませる
夜の実在と白く明滅する幾らかの星
忘却の遠い彼岸に置き去りの僕ら
 
この夜や煙や希望や諦めの世界において
僕らはまだ
主人公であり続けているか?

 




友達の彼女は
僕の影をさらっていって
とうとう独りぼっちになってしまう
家路の途中の曲がり角で
千切れ千切れの雲間に広がる
夜空をまた見上げる
 

この夜や煙や希望や諦めの世界において
僕はまだ
主人公であり続けているか?


口笛を吹くように
答えを導くつもりの無い問いを繰り返し
惨めな性根に酔い疵れて歩いた
どんな真実めいた言葉たちも
嘘になっていくのを感じていた
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