回覧車?/ブライアン
 
だった。誰もいない売り場を通り抜け、3階へ向かう。屋上に続く扉を開くと、そこには小さな観覧車がある。観覧車にも人が乗っている気配を感じなかった。おもちゃのようだった。赤と黄色のペインティングを施された観覧車を眺めていると、自嘲気味に、乗られますか、と尋ねる声がした。店員だった。乗れるんですか、と驚きを含んだ声で尋ねると、店員は、ネタにはなるでしょう、と苦笑いして返す。料金を払う。店員は扉を開けてくれた。小さな箱の中へ入る。扉を閉める店員は、いい思い出に、と言って見送った。ゆっくりと観覧車は上昇した。高松の海が見えてくる。山が見えてくる。雲の厚い日だった。色彩を欠いた景色が広がっていた。倉庫の立ち並
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