回覧車?/ブライアン
ち並ぶ近郊を眺める。何の目的で、何の根拠を持って、ここへやってきてしまったのだろう、と思った。空しさがふつふつと生まれた。色彩を欠いた景色は、不思議な感情を抱かせる。輪郭が失われていくようだった。曖昧だった。相対的な感覚が失われていく。陽に照らされない高松の海は寂しかった。小さな観覧車だった。あっという間に一周を終えた。店員は、お帰りなさい、といって迎えた。その瞬間、観覧車の上で見た景色がその店員の瞳に映し出された。曖昧さが、そのまま店員の瞳に。人は何の目的もなく、何の根拠も持たずにここにいるのだった。
旅行カバンの上に座ったまま、バスが来るのを待っていた。日は完全に暮れた。湿気を含んだ風が吹いた。その度ごとに人恋しく思えた。暗くなった港には点滅する光がちりばめられていた。空には無数の星があった。肉眼で見える、最も隣接する星と星の間でさえ5000光年離れている、と、なにかで読んだ。港の光はよそ者をいぶかしそうに見る。星の光は5000光年離れている。何の目的も、何の根拠も持たずに、暗闇のバス停で一人バスが来るのを待っている。
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