八月の絶唱/飛鳥 彰
 

細長き実をぶらさげて
藤棚は
葉月の終わりにひとを憩わす


公園の隅に咲きたる
黄色い花
日射しをあびて 影を泳がす


蛇のごとく地面を這ひたる
藤の根は
棚をみどりの海に変えてゆく


ふしぎなる紅き実のごとく
咲きし花
夏の終わりに 血潮うねらす



短歌 「自然の祝祭」


黄金郷(エルドラド)
と名づけられたる睡蓮は
水上に舞う踊り子のごとし


水ぬるむ熱帯スイレン
いくえもの金のつばさで
するどくはばたけ


蘭室の友に交わる心地して
気高き大志(こころ)
香り豊饒(ゆたか)に


蘭咲きて
薄むら
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