ゼフィルス讃歌/飛鳥 彰
 

樹の幹をこつこつ叩けば
ゼフィルスが翔ぶ とひとはいう
見知らぬ誰かが そっと 目を覚ますよう
たたいたんだろうか それは知らない

長時間あるいてきたわたしの足許にひろがる大地
そこをかるくたたいてみたら
悲しみ色したゼフィルスだとか
すこし幸せなゼフィルスだとか
次からつぎへと翔びだすので
あたりはいちめん 蝶の乱舞で狂いはじめる

蝶の乱舞で狂いはじめる
乱舞するゼフィルスが
千年の夢の中で狂いはじめる

たそがれになって碧い妖精のような風が吹くと
ゼフィルスは神経の網の目のような
木々の梢に帰って眠る とひとはいう

それまでの時間
わたしはどん
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