一行詩集「夏収め」/明楽
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不揃いなアスファルトが軋む暑さすら踏みしめてゆくさま自虐の体
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汗の匂い 生命の匂い 生きている
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カラスアゲハがふりかけた鱗粉が誘う妖しく光る夜の夢
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蛍の光を追ったまま 常夜の夏へ旅立ち行方不明
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火照った街並みをなだめるように響いて月明かり
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うちわで風をそよいでくれる母のいた涼しい熱帯夜
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生きている 生きている生きている生きていた夏
六
清々しき墓参りの朝 雑なこころも今ばかりは静謐で
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墓前で合掌 我が身の二重螺旋の軌跡を解く
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