一行詩集「夏収め」/明楽
 


飲み干したコップに玉の汗 秘められたる欲情煽り

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頭を垂れた向日葵が好きだと言ったあの人が好きだった夏

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百日紅の花影で秘め事のようなくちづけを交わす夕暮れ

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夏空の下 交わした約束は絵空事

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恋熱に浮かされ繋いだ手と手は秋を持たずにさようなら

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この恋が本気かどうか確かめるため冬になるまで想いは秘めておく





波打ち際で海と陸との睦言聞いた小さな貝殻 ほんのり桜色に染められて

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羽化したウスバカゲロウの宿る網戸の静かな朝

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夏山に分け入り耳を澄ませば自然の騒
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