一行詩集「夏収め」/明楽
 
付いた青草が放つ湿った呼気にむせ返る

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蝉が地上に出てきた穴をくぐって胎内回帰

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迷いなく伸びゆき咲きゆくタチアオイが羨ましくて涙ぐむ





冷えたトマトに齧り付き身体が目覚める真っ赤な朝

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露草の青が隠し持つ夏の秘密を解き明かそうと朝露のしずくを集め飲む

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母からもらった安らぎにも似た膨らみをして睡蓮のたなごころ

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朝顔の合間に咲く夕顔の場違い甚だしきことこの上なく

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むせかえるサルビアの赤を深呼吸して一滴の蜜に潤い求める

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激しさの合間を縫うようにはらひらりと舞い遊
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