ブロッコリーをなげつけろ/詩集ただよう
。このウブなナリ、嗚呼、我が産声。
あれから十余年か、と私は邸宅の座間で寝転がり、感慨に耽っていた。お祖母さまの温かい膝に頭蓋を委ね、耳垢の掃除をして頂いていた。まだお祖母さまが存命であった頃、田島一族髄一のお祖母さま子であった私はかように暇さえあればお祖母さまの元へ馳せ参じ、耳掃除をせえや、と毎度言い聞かせていた。
「ブロッコリーをなげるのだよ。あんたの好きなときになげたらええ。なげなさい。なげなさい。」
そんな私を寵愛するように、お祖母さまは毎夜床に着いた私の耳元で嬉しげにそう言ってくださるのであった。まだ幼く、陰毛の似合わない年頃であった私はそれを鵜呑み、家訓とし、その後も忘れる
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)