海猫へ/詩集ただよう
 
隣町で行われた口喧嘩大会の優勝者が不毛な砂漠のこの町で哲学者だと誉め称えられていた。
僕は昨日設置されたばかりの障害者専用ポストに手紙を投げ入れたところだ。
普通郵便と同じ切手を貼るのと引き替えに、ラクダに乗ったもう歩けない少年が一週間以内には届けてくれる約束だ。
内容には昨日一日で食べた獣や果実のことやら決闘に敗れてさらし首にされた兄貴のことやサボテンの花のことやらをしたためた。
兄貴は哲学者に決闘を申し込んだはずだったが現れたのは手練の騎士だった。
その墓に添えたサボテンの花は、年に四度行商に来る遠洋の緑豊かな島の少女から譲り受けたものだ。
礼に砂銀を麻袋に詰めて渡した
[次のページ]
戻る   Point(0)