海猫へ/詩集ただよう
 
したが、綺麗ではないからいらないと彼女はかぶりを振って、未だ熟していないイチジクの実を貰って行った。
昨日それを思い出して、しまっておいたイチジクを食べるともう甘くなっていた。
きっと彼女の助けにもなれただろう。
甘い匂いに釣られてやって来た海猫達の一人を、明日の決闘の為にと祈りを捧げたあと、剣で刺し命を頂いた。
商社に勤めて四年経った君はそちらの暮らしには慣れただろうか。
そんなことを海猫の血で洗われた我が剣を眺めながら思った。
初めて見たサボテンの花は青い色をしていてその絵を君に送ろうとも思った。
だから僕の優しい友達にこの手紙を託す。
どうか祈っていて欲しい。
少なくとも僕は兄より強い。

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