この夏は/高杉芹香
なしのまま、たったひとりで泣きじゃくる女の姿は、傍から見たらきっと奇妙だったに違いない。
あれは何の涙だったんだろう。
特別、霊感があるわけでもないけれど。
あそこには。
強いパワーを感じた。
パワーって語彙はきっと違うんだけど。
それは凄い念だった。
たまたま、その時代に生を受け。
この地で生きてただけの先人たちだ。
どれだけ生きたかっただろうか。
どれだけ熱かっただろうか。
どれだけどれだけ
愛する人ともっと共に生きたかっただろうか。
考えれば考えるほど。
たまたまこの時代に、この肉体に生を受け、あの地で生まれ、生きて来ていた
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