この夏は/高杉芹香
記念像は綺麗で。空も淡い青で綺麗で。
生きてる自分が今ここで空を見上げてることがなんだか不思議な気分だった。
月日が経過してるだけで、これだけ平和なんだと思った。
坂道を下って小さな川べりを、原爆投下地点に向かって歩いてみた。
予想に反して、質素に、ただひとつ、小さな塔が立っていた。
ここに、あの朝、原爆が落ちたんだ、、、。
考える暇もなかった。
投下地点のその塔の前に立ったとき。
体が震えて、ざわざわと、ただ大きな風を体が感じて、
涙が止まらなくなった。
あたしはひとり しゃくりあげながら泣いた。
真っ赤なコートを着て、塔の前に立ちっぱなし
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