染めてくれない - dye scarlet over white –/橘柑司
の上に倒れて死にたいと言ったのは、サトシだったか。気持ち良いものでもなんでもない、海の方がきっと良いだろうと言うことをおしえてやろうか。僕はPDAを取りだそうとポケットの中を探ったが、何も手に当たらなかった。どこかに落ちたのだろうか。辺りを見回してみると、既に僕の右手の中にあったのが見えた。もう手の感覚が無いと言うことか。これでは、満足にキィを打つことはできないだろう。僕は、メールを打つことを諦めた。サトシが運良く海の中で死んでくれるしかない。
僕の口から一塊の空気が漏れた。身体がぶるんと震える。もうまぶたがとじられようとした。
しかしそのとき、視界の端にあかいものが見えた。あまりのあ
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