染めてくれない - dye scarlet over white –/橘柑司
のあかいあかに、僕は目を惹かれた。あかは、ゆっくりと前進をしていた。そのあかは、僕の身体から出ているようだった。じわじわと拡がっている。深く積もっている雪の上でも横に伸び続けている様子をみると、僕を撃ったやつはうまく動脈にあてたみたいだ。
酸素を多く含む鮮やかな血が、純度の高い雪を染めていく。なんて綺麗なんだろう。混ざりけのない色どうしが合わさると、こんなにも輝くものなのか。とても、鮮烈だ。
視界の中にある雪の殆どが血に染まっていた。のこりの白も、もうそろそろ赤くなるだろう。ここで、見納めよう。全てが赤くなれば、それはもう下品なだけだ。
僕は大きな息を吐いた。胸がぶるりと震えた。しろが残っていることを確認して、まぶたを閉じた。
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