染めてくれない - dye scarlet over white –/橘柑司
 
まで積もった雪のため思うように動けなかったが、それはあちらも同じだったようだ。僕は、路地に入ってから少し待たなければならなかった。
「リュウ・カイトウで間違いないか」
確認は形式的なものだということだろう。それだけ、網の技術が優れているのだ。
「間違いない」
「君には選択する権利が与えられている。もしもこちらに情報を提供するならば、私たちは君にある程度の自由と生活を保障する」
「いや、いらない」
「そうか」
大きな音は鳴らなかった。街中だ。当然サイレンサを着けているのだろう。身体のどこかが熱いと感じたが、それだけだった。雪の上に倒れた時の衝撃の方が強く感じられたくらいだ。
 雪の上
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