迷い森/モリマサ公
 
「ここはどこなんだろう」
と苔むした薮を歩いてると、湿ってすべる。
裸足ではないが靴底にはもう穴があいていて、リストカッターたちのように深く浅くあらゆる皮膚に傷がついている。
透明の液体が世界のあちこちから湧き出る。
冷たい。なまぬるい。飲めないそれぞれのコップをみたし、手首をひたす。
橋がのびていく。新しい。
ワンリッターテンリッターを飲み干す感覚がすでになつかしく、ビルたちの群れの隙間を、脂肪色した雲が流れていく。
虹が幾重にも重なり霧もやの高速をヘッドランプが照らし、時間のようにあたしが流れていく。
「インフォメーション」とかかれた看板、に夏祭りや花火大会のことが書いてある。
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