真夏と重力/Utakata
る
風のない正午に
真っ直ぐ立ち上る灰色の魂が
サイレンの音の中へ消えてゆく
ひとかたまりの灰だけがうすくらがりの中に残る
***
おまえが発して
でもおまえのものではない言葉 と
薄荷色をした煙草のけむりが
渦を巻きながら昇ってゆく
絡まってできた螺旋を 一歩ずつ
踏みしめては地下道で 踊り続ける
天井に溜まったそれらが
耐え切れずに雫になって落ちてくるのを
舌先で受け止めては
白い嘘にして吐き出す
乾いた音を立ててゴミ箱の中に消える
***
空に
下向きの矢印を描いては
鳥が再びやってくるのを待つ
重力に従うふりをしている 飛行機が
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