真夏と重力/Utakata
 
機が
金属臭のする陽光を
死にかけた昼下がりに振り撒いてゆく
犬の下半身のかたちをした幽霊たちが
蒸発するアスファルトの上でうろついている

***

とおくで雷が鳴り始める
駅で一番最初に出会った電車に乗り込みたい衝動に駆られる

***

全ての
ものが重力を持つので
黒い鳥がどこに飛んで行ったのかもわからない
誰かがプールサイドに置き忘れていった
唇に そっと指を触れ
目を閉じては
今まで失ったものを一つ一つ丁寧に数え上げてゆく

***

絵日記は永遠に埋まらないように思えた


どこまでも
みどりいろがつづいていて





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