靴墨の詩/かいぶつ
言葉を浴びせられた
それでも詩人は靴磨きをやめなかった
詩人はそれしか稼ぐ方法を知らなかったからだ
詩人は恋愛も財産もとっくに諦めていたが
詩を書くことだけはどうしても諦めきれなかった
靴磨きをする彼の傍らにはいつも
手書きの詩集が数冊だけ売られていた
だが詩集を求めるものなどひとりもいなかった
詩人はいつのまにか老人になっていた
夜が明け、客足も途絶えたころ
腹を空かせた詩人は
なけなしの金をにぎりしめ店をたたんでいた
すると詩人のもとへ見なれぬ客が訪れた
それはひとりの少女だった
悪いな、おじょうちゃん
もう、店じまいなんだ。
そう言
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