靴墨の詩/かいぶつ
 
せっせせっせと額に汗を浮かべ
仕事も休んで靴を磨いた

詩人は次のデートで手も顔も
靴墨だらけにしながら
花束を抱え、彼女に告白した
彼女はこう言いはなった

  金にならない物書きになんて興味はないの。

詩人はその日から安い石鹸を買い念入りに
体を隅々まで磨いた
そして夜毎、街角に立っては
物好きあいてに体を売った

詩人は次のデートで結婚指輪を渡そうと心に決めていた
しかし詩人の前に彼女は二度と現れなかった


  2  靴墨の詩


詩人はその日から、しがない靴磨きとなった
酔客あいてに愛想ふりまき、彼の過去を知るものには
容赦なく卑猥な言葉
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