無花果の花/亜樹
なっているらしい。
そういう風なことを、歳若い妹島に言うものは、それなりに多い。
けれど、妹島はこのマリア像を母親のようだと思ったことはついぞなかった。
彼の想像する母親とは、こんな穏やかな表情はしていない。
彼の母は、いつもくたびれた、疲れた顔をして、さもなければ眠っている。
布団の中で、丸くなって。
――彼女はいつも妹島を見ない。
礼拝堂の掃除を終えた頃、来訪者があった。
隣――というても、随分と離れている――のおかみさんが、夕べつくりすぎたおかずを持ってやってきたのだ。
おかみさんは、末の息子が他県の大学へ行ってしまった昨年から、こうして何かと妹島の世話
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