無花果の花/亜樹
 
暮らしている。
 彼の通っていた学校は、この家からけして近くはなかったが、不満はない。まだ若い妹島は、この家に越してから、自転車をフルに活用している。
 休日の朝、妹島は家の掃除をする。学友たちはそんな妹島を信じられないものを見るように見るが、『家の管理』という名目で住まわせてもらっているのだから、当然の義務だろう。
 小さいながら、備え付けられている礼拝室の戸を開ける。光の中、埃が舞うのが見えた。
 小さな部屋の奥には、真っ白なマリア像が置かれていた。
 月に一度のミサの際、このマリア像が自分の母親に似ていると妹島に言った男がいた。
 その男は妹島より随分と年上で、母親は既になくなっ
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