河原の記憶/小川 葉
涙が流れました。そして自分が考えるべきことは、家族三人の楽しい思い出を想像すること以外にないと考えました。しかしその想像は、さらに私を悲しくさせ、あのときなぜ、上流で豪雨になっていることを、誰かが教えてくれなかったのだろうか、誰かが気をきかせて教えてくれていれば、二人は中州に行かなかったのに。私は、悲しみに疲れ、眠ってしまいました。
「ねえママ、このお魚ね、僕が釣ったの、大きいでしょう」
「ちがうよ、それはパパが釣った、お魚」
「ちがうよ、ぼくだよ、からだの模様が、他のより、少し薄いから、ぼく、覚えてるんだもん」
「どうだって、いいじゃない、それよりパパ、はやくお魚焼いて。おなかペコペコ」
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)