河原の記憶/小川 葉
 
コ」
 私は、楽しそうな家族三人の会話によって、目を覚ましました。さっきの女の人、そしてお父さんと子供の会話でした。薪が焦げる匂いがしました。お父さんと子供は、釣りしてるときにはいていた長靴を脱ぎ、さっきお母さんが持って来たサンダルに履き替えました。おそらくは、お父さんと子供が、ずっと上流まで釣り登って行ってしまったので、お母さんは、二人の帰りを待っていたのだろうと思いました。顔を突っ伏していたのは、べつに泣いていた訳ではなく、眠っていたのだなと思いました。そして、お父さんと子供の悲劇もなかったのだと、三人の家族が楽しそうに話しながら、釣ったヤマメを焼いて食べている様子を見て、わかりました。

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