河原の記憶/小川 葉
 
死に飛ぶ二匹のかげろうの様子を見て、私は涙がこぼれそうでした。お母さん、顔を突っ伏して、泣いてる場合じゃない、二人の、二人の魂が、今、あなたのもとへ、と、その瞬間、水面が割れました。二匹のヤマメが、水上にジャンプし、二匹のかげろうを食べてしまったのです。ああ、なんて惨い。二人の魂が、たった今、神のゆるしを得て、やっと、かげろうという、命はかない羽虫に化けて、お母さんと、ほんのひとときの再会を果たそうとしたのもつかの間、二つの魂が宿った二匹のかげろうは、その願いを果たすことが出来ないまま、ヤマメに食べられてしまったのです。私は、とてもやるせない気持ちになり、岩陰に身を隠して、顔を突っ伏しました。涙が
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