河原の記憶/小川 葉
だ、あの中州に渡ってみよう、などと、お父さんも調子に乗り、お父さん、あぶないから、よして、と言う心配性のお母さんも、今日だけはいないことだし、そうしてその日は、よく魚が釣れました。夢中になって釣りをしていると、雨がぽつぽつ、岸に戻ろう、と思ったとき、川の水位が信じられないくらいに上がっていて、それでもなんとか岸に戻れそうだ、と、父は子をおぶって、腰まで水に漬かりながら川を渡って、流れはますます強くなり、中州と岸の、ちょうど中間地点に達した頃、水位は、お父さんの首まで達しており、ついに子供は泣きはじめ、半狂乱となり、父もあわててしまい、あしもとのバランスを崩し、足が水中でふわりと浮き、体が水中で斜め
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