河原の記憶/小川 葉
す。だから女の人は、ふたりを偲びにこの川に来たのです。死の現場である川は、家族三人で、週末になるたびやってきて、魚を釣り、焚火をして焼いて食べる、そんな思い出の場所だったのに、おそらくその日、お母さんは用事があって(それは同窓会か何かで)、家族と川に遊びに行けなくなり、週末の家族の楽しみといえば、河原で過ごすことなのに、でもしかたがないね、お父さんと子供だけで、遊びに行って来ます、心配はいらないよ、だってお父さんがついてるもの、という次第で、父と子だけで川に出かけたのです。
その日。下流はとても良い天気。しかし上流では、ものすごい豪雨。そんなことも知らず、男ふたり、父と子は、今日は新規開拓だ、
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