詩人の墓/亜樹
ったけれど、自発的に詩を書くことはもう私には出来なかった。
他の人と違うことはしたくなかった。
自分の考えなんて知って欲しくなかった。
可笑しな人だと指を指されるのが嫌だった。
ああやっぱり、それは詩人ではない。
大学に入って、2年目の春、私は今までにないひどい鬱状態に陥った。
ものを食べれば吐いた。
わけもなく泣いた。
左の手首には赤い線が増え、部屋の壁を拳が青くなるまで叩いた。
朝、鳥の声を聞きながら寝て、夕暮れ、赤い夕日をみて目を覚ました。
私の部屋は五階だった。ここから飛べば死ねると思った。
そんな日がしばらく続いて、ある日私は出席日数を稼ぐために
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