JIKU-MU*HI/影山影司
そばで朗々と「本日之天気」なる一文が流れた。試しに本書の草稿を与えた虫の糞を喰ってみると「れ即ち字喰」という一文が同様に流れる。
仮説に辿り着いた私は好奇心の駆動機となった。いや、仮説を自身によって否定したかったのだ。小型の発掘道具を持ち、巣穴を掘り起こした。ざわざわと一、二之集団を構成する虫が手足を伝い、噛みつかれた。手足の皮膚は爛れ、激痛を発したが私は手を止めなかった。皮膚の奥、血管が破かれて血まで滴り落ちる。私は、巣穴の最果てに到達した。丁度其処では支配者が尻を突っ込み、頭を振っている最中であった。頭を摘んで、背後に放り投げた。穴だ。穴の最果ての穴だ。手鏡で光を当てても、覗き込んでも真っ
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