夏の池/水町綜助
て
広葉樹の葉々の間から
昆虫めいて瞳が覗いている
右か左
どちらからも対岸に行くことは出来る
しかしその直線上に僕が行ったとして
そこがそうだと僕にわかるだろうか
*
謎めきの
その色を思うとき
それは濡れた光沢を持った深緑色と
縁取る澄んだ黒い脈で
トルコ石の青は旅の始まりに渡された
目の前で手を開いて
僕はそれを摘んで
円をつくる
池の散歩道の先を見て
どこかで見た蝶々の色だ
標本で子どものころに
たぶん暑い国の蝶で
雨の中を飛ぶ
森の中に降る
*
今日は雨で
眠った
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