「 ムーフールー。 」/PULL.
その顔が赤い、夕焼け色に染まっている、
「あれ、見てみなよ。」
坂の途中で自転車をとめる、カゴから身を乗り出したムーフールーが、
「きゅぅ。」
と息を飲む。
街が、夕焼けに燃えている。眼下に広がるものすべてが夕焼けに染まり、その向こうできらきらと波打ち、なお燃える海の上で、おおきく眼を開けた太陽がゆらいでいる、
「じゅっ。」
太陽が海に触れる、波がひたひたと太陽を舐める、音を立てて冷えてゆく、風がすこしつめたくなり、太陽が、ゆっくりと今日の眼を閉じる、さっきまで夕焼けに燃えていたのが嘘のように、街が暗く、夜の瞼に包まれる、まっ暗の空を見上げムーフールーが低く、喉を鳴らす、
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