「 ムーフールー。 」/PULL.
る、ぜんぶ入れ終わったころにはムーフールーしゅかしゅかのぱんぱんで、指でつつくと、
「ぷぅう。」
と息を吐き出してちいさく、もとのおおきさになった。
「ほら行くよ。はやく乗って。」
戸締まりに手間取るムーフールーに声を掛け、わたしは漕ぎ出す。一歩漕ぐごとに坂を駈け上がってくる海からの風が、わたしをうけとめてくれる、心地よい、潮の香が髪を撫でてゆく、後ろから、鍵を咥えたムーフールーがぽむぽむと追い掛けてきて、カゴに乗る、
「ぽしゅ。」
一直線に坂を駈け下りる、もう漕ぐ必要はない、ごうごうと風が耳もとで囁いている、食いしん坊のムーフールーがもふもふと頬張り風を食べている、その
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