屈折率/ブライアン
 
だった。 

 足を止めて、深雪に足を踏み入れる。小さな用水路が雪で覆われていて、足を踏み入れると、中が空洞になっている。長靴を履いた足は用水路の水につかる。水の冷たさが長靴のゴムを通しても伝わる。体の半分が用水路に埋まる。いまや両足が用水路の水に触れている。冷たさが、余計に空を輝かした。視線の前には雪があった。予定などなかった。太陽が昇り、空気中の水の分子が動き始めるまで、何もしなくてもよい。何もしなくてもよいなら、何もしない。

 しかし”わたくし”は曇り空へと向かわなければならなかった。”でこぼこの凍った道を踏み”歩かなければならなかった。歩き始める”わたくし”は透明な水から徐々に輪
[次のページ]
戻る   Point(0)