屈折率/ブライアン
 
に輪郭を生み出す。空間から”わたくし”が浮き彫りにされる。”わたくし”が”縮れた亜鉛の雲”へ向かい歩けば、”わたくし”は”わたくし”となり、光を透過させることのない、不純物となる。

 人は不純物だ。何らかの束縛がある。輝く水ではない。人は光を透過させることは出来ない。光に満たされた空間に”わたくし”がいるに過ぎない。”わたくし”に照る光はその進路を変化させる。そしてまた、”わたくし”も体の向きを変える。

 歩道橋の上で立ち止まりはしなかった。約束の時間が迫っている。そもそも歩道橋の上を歩く人々は、輝く太陽を見上げても立ち止まるものはいない。誰もが、”陰気な郵便脚夫”だった。キラキラと輝かなくともよい。不純物なのだ。自然を憧れ、焦がれ、そして、その心を裏切りながら”縮れた亜鉛の雲”へ向かう。

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