此方の景色/因子
所は校舎の壁の凹凸やパイプで死角になっていて、思っていたよりも狭いのだった。足元の雪を蹴飛ばして、私より先に彼女が駆け寄った。遅れて一歩踏み出した私はしかしそこで動かなくなった。
ぎゅっ、と雪が鳴いた。私の目は目の前の少女を注視していた。
細い彼女の指が嬉しそうに雪に触れたそのとき、その指は白とはいえなかった。それは黄色人種のきいろな指であった。それからそのきいろな指は冷たさに触れたが為に黒々しい程に赤みを帯びてしまった。
どこか外国の工場で製造されたのであろう赤いエナメルはもはや赤いだけのエナメルだった。きいろい指の先に光る赤いだけのエナメルだった
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