此方の景色/因子
った。そこで彼女の絶対的な少女性は静かに失われていった。せめてもの抵抗に、私は結局彼女とそれ以降会話を交わさなかった。
***
次の年私は東京の大学を受験して落ちた。仕方のないことだと私は言った。父も母もそう言った。
合否発表の日、東京は雪だった。東京の雪はべたべたしていてすぐ溶けた。帰り道に積もっていた雪は凍っていて、掬おうとした私の裸の手を拒否した。濡れた指先は変色して赤らんだ。
受験の前に気まぐれで原稿を送った会社から電話が来たのはそれから数カ月後のことだった。
***
そして今私の頭の上には呆けたような青空がある。
ふと、右の掌に
[次のページ]
戻る 編 削 Point(6)