此方の景色/因子
 







彼女は美しかった、校則をまるで無視した赤い爪、私がはじめて見たその色、その肌、笑った顔。とても綺麗だと思った。
表へ出ると柔らかそうな雪は既に他の子供たちによって踏み固められたり掘り返されたりしていて、私と彼女は口をきくまでもなく、一緒に積雪の平らに残った部分を探し始めた。歩を進めると足の裏で新雪はぎゅっぎゅっと鳴き声をあげた。彼女に踏まれた雪も同様だった。そうして二人分の足音を聴いていると、寒さにはとうに慣れた筈の頭がくらくらした。
校舎の裏へまわると彼女のいつも腰かけていた石段が、誰にも侵されていない証拠に真っ白になってそこにあった。近くへ来てみるとこの場所は
[次のページ]
戻る   Point(6)